| 2004年1月10日(土) |
合宿所便り NO.80「瀬尾君"働き者"になる!!」 |
ここ沖縄に来て、海上訓練ができない生徒が2人います。1人は江口君(18歳、元非行)。昨年末、訓練中に足を傷め、ただ今、作業が中心です。
もう1人が瀬尾君(21歳、無気力)。彼は健康ですが、技術が下手で乗れないのです。
ウインドサーフィンができるようになるには、早い人は1〜2日、普通の人で1週間か10日、遅い人なら1ヶ月以上かかります。ところが、彼は入校して既に半年を過ぎています。身体能力の低さはあるにせよ、一向に進歩がないのです。訓練では、艤装(ぎそう)を遅くしたり、道具を故意に壊したり、仮病を使ったりと、あの手この手で訓練時間を短かくさせようとします。いたずらに時間だけが過ぎていきます。生活態度も、コーチの目を盗んでは食事を一人占めしたり、盗み食いしたり…。
しかし、そんな彼も、ここ沖縄に来て、何か心の変化があったようです。
それは、彼が洗濯係とウインドの道具管理係を任されてからです。以来、彼の1日は、朝から晩まで大忙しになりました。何しろ、12人分の洗濯物と道具整理です。1日のほとんどをそれに費やし、時間を見つけ、計算しながら五体を動かすようになりました。
彼には過去、2回の脱走経験があります。が、今は、家の外にある洗濯機まで行っても、もう逃げません。いつでもチャンスはあるのに。考える暇も無いくらい忙しいのか、それとも任された事に一所懸命で、本来の彼の自我を通り越した、ということなのか…。
ひょっとすると、今の時点では彼が合宿所で1番の働き者かもしれません。「腕時計」の使用許可も下りました。こんなことは、今までの彼では考えられなかったことです。
生徒達のこういう小さな変化は、私達コーチにとって、とても嬉しいことであり、その一瞬に大きな幸せ、「生き甲斐」を感じます。その一瞬に「ありがとう」と、生徒達にも感謝しています。
ある日の会話
私「卒業した生徒から、『あの時はありがとうございました』と言われれば、本当に幸せでしょうね」
山口コーチ「確かに。しかし、ここに来る生徒達は、ここを卒業するより、日常に戻ってからが大変なんだ。社会で立派にやっていけるようになる。それが本当の卒業だ!」
この言葉の重さ、優しさを、誰が本当に分かるでしょうか。
暗がりの早朝、朝の体操を終えた頃、雨戸を開ける。充満する熱気を吸い込んで、7ヶ月ぶりに蘇った合宿所は生き物の呼吸のように、一気に私達の熱気を戸外へ吐き出す。今日が始まった。
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